主観的な内容ばかりなので閲覧注意です。どうでもいいことも多く書いてます。
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*短文を複数個
*後でちゃんと形にするかもしれない
*メモ程度なのでだいぶ省いている
*三成が家康を評価しかけている
*家康が純粋じゃない
山の向こうに陽が沈みかけていた。陽光を反射して大きな川が火花でも爆ぜるように瞬いていた。その光から眼をそらすことなく、じっと家康は戦火の燻る戦場を見下ろしていた。主君の身体を支え、昔より幾分か背の伸びた少年を腕に乗せて、忠勝も共にその景色を見ている。主君と二人で、このように死体しか残らぬ戦場を見下ろしたのはこれで何度目になるだろうか。主君に映る景色と、己に見える景色は同じように見えても意味合いが違う。主君はこれを見て何を考えているのだろう。忠勝は何度も何度も幼くも己の命と人生を捧げた子供の想いを酌もうとするが、けしてそれが見える日は来ないのだろうな、とも思っていた。せめて昔のように泣いてくれさえすれば、まだ何かできるというのに、今の主はその柔らかな陽の光を詰め込んだような瞳を見開いて、その景色を脳裏に焼き付けるようにじっと、見つめるだけだった。
「何人死んだのだろうな」
それは忠勝に聞いているような声音ではなかったので、忠勝は返答はしかねた。それでも身体を覆う機械の鎧が、呼応するようにシュウシュウと音を立てる。家康は今日は少なかった、と呟いた。
「五千を越えたぐらいだろうか。多く見積もっても一万以下だ。わしの部下は、五万、生き残った」
淡々と人を数字で数えるようになったのはいつからだろう。そしてそんな数で数えられるほどの多くの人、その一人一人との心の繋がりを持とうとしようとしたのは。五万残り、そして五千死に、この子供の心の中でどれ程の人が死んだのだろう。忠勝はわからない。
「この日ノ本に暮らす人々と較べれば、ほんの一握りだ。わしはこれでまた、これよりも多くの人々を守る機会を手に入れた」
そのためにどれ程の人を殺さなければならないのだろうな、と忠勝に問う声に、感情の色は探せなかった。自分と二人きりでも、この人は弱みを晒さなくなってしまった。いつからだろう、この人がこのように人々の亡骸を涙も流さずに見れるようになったのは。いつからだろう。どうしてだろう。どうしてこうなってしまったのだろう。忠勝はわからなかった。
「家康、どこへ行く」
祝杯が行なわれている陣幕の明かりの中から、三成はそっと逃げ出す家康の背を見つけそれを追った。陣幕の向こう、木々の茂る袂で家康はそこで休む本多忠勝に歩み寄るようであった。家康に反応し立ち上がる本多と、その背に乗ろうする家康に、三成はようやく声を掛けた。今回の戦は先陣を切った徳川の功績あってのものであった。勿論半兵衛の策のお陰でもある。それでも三成はその功労者を労う程度の気概は持ち合わせた。豊臣は功績を尊重する軍である。陣幕に入り、お前も祝杯を上げろと言おうとしたが、家康は外套を深く被り、振り返ったその顔も木々の陰のせいで口元しか見ることができない。明るい笑い声を背中で聞いて、三成はなぜこの男はあの中に居ないのだろう、と不思議に思った。三成を対峙するように薄暗い闇の中に佇む家康は、金色の目立つ衣装に身を包んでいても、その背後に立つ本多に守られているせいか薄ぼんやりとしていた。
「三成か」
太陽のようであるこの男がこれほど希薄なのも珍しい。返す言葉もやけに落ち着いていて、もしかしてこれは家康ではなく、家康の振りをした別人ではないかと思ったが、本多忠勝が前のめりになるように男を背後から庇っていたので、家康本人であると当たりをつけた。三成は家康の声など明白に覚えていない。
「すまないが、ワシは今日はどうにも具合が悪くてな。先に三河に帰らせてもらう。心配せずともワシの部下達は自由に片付けて自分で帰れる。迷惑はかけないはずだ。今晩はよろしく頼む」
「そうか」
家康の具合が悪いかどうかなど三成にとってはどうでもよいことだ。秀吉や半兵衛に迷惑をかけぬよう息災であれとは無論思うが、本当に病気か、医師を呼ぶからしばらく待てなどしち面倒くさいことはしない男であった。
「ワシの部下たちはワシが帰ることは知っている。伝える必要はない」
「わかった。家康、此度の功績、秀吉様がお褒めなさってらしたぞ」
「そうか。ワシも秀吉殿のお役に立て嬉しい限りだ。また今度顔を出させていただこう」
家康はそう言って忠勝の背に乗った。ごう、と風を唸らせて飛び立った巨体を見上げ、三成は再び陣幕へと帰った。上空からその小さくなる三成の銀髪を見下ろして、家康はすぐに目を離した。
「何人死んだのだろうな」
それは忠勝に聞いているような声音ではなかったので、忠勝は返答はしかねた。それでも身体を覆う機械の鎧が、呼応するようにシュウシュウと音を立てる。家康は今日は少なかった、と呟いた。
「五千を越えたぐらいだろうか。多く見積もっても一万以下だ。わしの部下は、五万、生き残った」
淡々と人を数字で数えるようになったのはいつからだろう。そしてそんな数で数えられるほどの多くの人、その一人一人との心の繋がりを持とうとしようとしたのは。五万残り、そして五千死に、この子供の心の中でどれ程の人が死んだのだろう。忠勝はわからない。
「この日ノ本に暮らす人々と較べれば、ほんの一握りだ。わしはこれでまた、これよりも多くの人々を守る機会を手に入れた」
そのためにどれ程の人を殺さなければならないのだろうな、と忠勝に問う声に、感情の色は探せなかった。自分と二人きりでも、この人は弱みを晒さなくなってしまった。いつからだろう、この人がこのように人々の亡骸を涙も流さずに見れるようになったのは。いつからだろう。どうしてだろう。どうしてこうなってしまったのだろう。忠勝はわからなかった。
「家康、どこへ行く」
祝杯が行なわれている陣幕の明かりの中から、三成はそっと逃げ出す家康の背を見つけそれを追った。陣幕の向こう、木々の茂る袂で家康はそこで休む本多忠勝に歩み寄るようであった。家康に反応し立ち上がる本多と、その背に乗ろうする家康に、三成はようやく声を掛けた。今回の戦は先陣を切った徳川の功績あってのものであった。勿論半兵衛の策のお陰でもある。それでも三成はその功労者を労う程度の気概は持ち合わせた。豊臣は功績を尊重する軍である。陣幕に入り、お前も祝杯を上げろと言おうとしたが、家康は外套を深く被り、振り返ったその顔も木々の陰のせいで口元しか見ることができない。明るい笑い声を背中で聞いて、三成はなぜこの男はあの中に居ないのだろう、と不思議に思った。三成を対峙するように薄暗い闇の中に佇む家康は、金色の目立つ衣装に身を包んでいても、その背後に立つ本多に守られているせいか薄ぼんやりとしていた。
「三成か」
太陽のようであるこの男がこれほど希薄なのも珍しい。返す言葉もやけに落ち着いていて、もしかしてこれは家康ではなく、家康の振りをした別人ではないかと思ったが、本多忠勝が前のめりになるように男を背後から庇っていたので、家康本人であると当たりをつけた。三成は家康の声など明白に覚えていない。
「すまないが、ワシは今日はどうにも具合が悪くてな。先に三河に帰らせてもらう。心配せずともワシの部下達は自由に片付けて自分で帰れる。迷惑はかけないはずだ。今晩はよろしく頼む」
「そうか」
家康の具合が悪いかどうかなど三成にとってはどうでもよいことだ。秀吉や半兵衛に迷惑をかけぬよう息災であれとは無論思うが、本当に病気か、医師を呼ぶからしばらく待てなどしち面倒くさいことはしない男であった。
「ワシの部下たちはワシが帰ることは知っている。伝える必要はない」
「わかった。家康、此度の功績、秀吉様がお褒めなさってらしたぞ」
「そうか。ワシも秀吉殿のお役に立て嬉しい限りだ。また今度顔を出させていただこう」
家康はそう言って忠勝の背に乗った。ごう、と風を唸らせて飛び立った巨体を見上げ、三成は再び陣幕へと帰った。上空からその小さくなる三成の銀髪を見下ろして、家康はすぐに目を離した。
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